1/ 3
http://www.jcr.co.jp
15- D- 0151
201 5 年 5 月 2 9 日
自動車メ
ー
カ
ー
大手各社の 15/ 3 期決算の
注目点
自 動 車 メ ー カ ー 大 手 各 社 の 15/ 3 期 決 算 お よ び 16/ 3 期 業 績 予 想 を 踏 ま え 、 株 式 会 社 日 本 格 付 研 究 所 (J C R)の現況に関する認識と格付上の注目点を整理した。
1. 業界動向
日系自動車メーカー8 社(上場 10 社のうち、トヨタ自動車の連結対象であるダイハツ工業、日野自動車 を除く)の 14年度の世界新車販売台数は前年度比 1.5%増の 25, 636 千台となった。リーマンショック前の 07 年度を 12%上回る水準であり、好調な北米や最大市場の中国などで販売増が見られた。15 年度は同 2. 9% 増の 26, 382 千台の見通しとなっている。中期的にみれば世界新車販売は成長が続く見通しであるが、足元で は北米以外の主要市場は伸び悩む見込みである。トヨタ自動車の15 年度販売計画においても国内が同1. 6% 減、海外が同 0.6%減で市場別では北米で販売増を見込むものの、それ以外の市場では減少または横ばいの 計画となっている。
国内では消費税増税前の駆け込み需要の反動減などで、14 年度新車販売台数は 6. 9%減となった。15 年4 月の軽自動車税引き上げなど事業環境は厳しさを増しており、15 年度も市場が回復するという見方は少ない。 海外では、中国は景気減速に加え供給過剰に伴う値引き競争の影響が懸念されている。需要低迷が続いてき た欧州市場は 13 年度にプラス成長に転じたものの回復に力強さはない。日本車のシェアが 8割を占める東 南アジアは域内主要市場であるタイやインドネシアでの需要低迷が続いている。
生産ベースでみると、国内生産台数は 14 年度 3. 2%減で、上記の新車販売台数の減少に加え、輸出台数の 3. 1%減も影響した。海外生産台数は 14 年(暦年)4. 3%増で過去最高となり、海外生産比率も 64. 1%まで上 昇した。12 年末以降、円高修正が進み、一部のメーカーで海外増産分について国内生産能力の活用などの動 きはあるものの、為替変動に左右されない収益体質を目指して、また輸送コスト、現地ニーズ把握などの面 からも地産地消、海外生産シフトという方向性は変わっていないもようである。
2. 決算動向
上記 8 社の 15/ 3 期売上高は前期比 7. 2%増、営業利益は同 12. 6%増の 5 兆 1, 040 億円となった。利益額は リーマンショック前で過去最高益であった 08/ 3 期を 11%上回る水準である。売上高営業利益率は 08/ 3 期 7. 4%を上回る7. 9%となった。米ドル/ 円レートは08/ 3 期対比で依然4 円程度の円高であったが、コスト削 減効果が利益率改善に貢献している。15/ 3 期は 8 社のうち 5 社が営業増益で、競争が激化している軽自動車 の比率が高い会社や、戦略的な投資を拡大した会社などが減益となった。また国内生産台数が前年割れとな ったため、日本セグメントの利益が減少した会社が多い。営業利益増減要因を大手 3社(トヨタ自動車、ホ ンダ、日産自動車)でみると、増益要因の「コスト削減効果」(原価改善、原材料価格変動、固定費増減な ど)4, 271 億円と「為替変動の影響」4, 276 億円によって、減益要因の「台数・車種構成」1, 201 億円をカバ ーした。
2/ 3
http://www.jcr.co.jp
ドル/ 円レートの想定は 115 円に集中しており前期比約 5円の円安が大勢であるものの、新興国通貨安によ る影響が大きくなりつつあり、3 社とも「為替変動の影響」を減益要因として織り込んでいる。
財務面については、15/ 3 期末の純資産は、業績改善や円安進行による為替換算調整勘定の改善などで全 社で前期末比増加した。大手 3社の販売金融を除いた自動車事業におけるネットキャッシュ金額(手元流動 性と有利子負債の差、トヨタ自動車は総資金量ベース)は約 9. 4 兆円まで増加した(08/ 3期約 4. 5 兆円)。 設備投資はリーマンショック直後に半減した後は増加傾向が続いており、15/ 3 期は08/ 3 期の94%の水準ま で戻った。16/ 3 期は前期比 6. 2%増の計画である。ここ数年間、工場の新設を凍結してきたトヨタ自動車が 先般、メキシコ新工場建設や中国での能力増強を発表するなど、全般的に海外の能力増強投資が続いている。
3. 決算に
お
け
る
格付上の
注目点
売上高営業利益率の高低は、ブランド力、コスト競争力、為替変動への対応力、注力している車種セグメ ント、インセンティブ、地域別での採算性など様々な要因を反映している。直近 3期で業績改善が著しいマ ツダは14/ 3 期6.8%に続き、15/ 3 期も6. 7%の営業利益率を確保した。円安効果が利益水準を押し上げてい る部分も大きいが、リーマンショック前の円安の状況下でも同利益率は 4.9%が最高であり、SK Y A C T IV 搭 載車の導入に伴う商品力向上と正価販売の徹底、コスト低減効果、北米セグメントの黒字化などが利益率改 善に貢献している。
上記8 社の売上高営業利益率は16/ 3 期 7.9%と高水準の計画である。しかし、「為替変動の影響」が決算 上マイナス要因に転じ、新興国市場も伸び悩みがみられるなど事業環境は厳しい。また国内では軽自動車が 新車販売の約 4割まで上昇し、海外では新興国向けの低価格車が増加するなど小型車・低燃費車へのシフト による損益上の車種構成悪化も懸念される。こうした中、商品力・開発効率の向上、コスト低減を目指し、 車台・部品の共通化などの施策を進めているメーカーが多い。これらの施策がブランド力、コスト競争力の 強化などを通して利益率改善にどのように貢献していくかに注目している。
一方、ここ数年で自動車メーカーによるリコールの頻度や規模が拡大しつつある。自動車メーカーによる 早期対応という姿勢も背景にあると考えられるが、規模拡大については部品の共通化が要因として大きいと 思われる。度重なるリコールによりブランドイメージの低下や品質関連費用増加を招いていないかフォロー していく。
近年、急激な景気悪化や災害から大きな影響を受けてきたことや、先述のリコール増加を踏まえて、財務 体質の強化が重要と言える。設備投資については海外能力増強に加え、トヨタ自動車の「T oyota New Global A rchitecture」( T NGA ) など商品力・開発効率の向上に向けた取り組みが当面の投資を増加させる可能性が ある。このような中でいかに財務体質を維持・強化していくかに注目している。
3/ 3
http://www.jcr.co.jp
(図表 1)上場自動車メーカー10 社の連結業績の推移 (単位:億円、千台、%)
売上高 前期比 営業利益 前期比
売上高営業
利益率
純利益
世界販売
台数
前期比 設備
投資額
前期比
トヨタ自動車 14/ 3 期 256, 919 16. 4% 22, 921 73. 5% 8. 9% 18, 231 9, 116 2. 8% 10, 007 17. 4%
(7203) 15/ 3 期 272, 345 6. 0% 27, 505 20. 0% 10. 1% 21, 733 8, 972 - 1. 6% 11, 774 17. 7%
16/ 3 期予 275, 000 1. 0% 28, 000 1. 8% 10. 2% 22, 500 8, 900 - 0. 8% 12, 000 1. 9%
ホンダ 14/ 3 期 118, 424 19. 9% 7, 502 37. 7% 6. 3% 5, 741 4, 323 7. 7% 7, 261 22. 3%
(7267) 15/ 3 期 126, 467 6. 8% 6, 516 - 13. 1% 5. 2% 5, 227 4, 364 0. 9% 6, 579 - 9. 4%
16/ 3 期予 145, 000 - 6, 850 - 4. 7% 5, 250 4, 715 - 6, 700 -
日産自動車 14/ 3 期 104, 825 20. 0% 4, 984 13. 6% 4. 8% 3, 890 5, 188 5. 6% 5, 363 14. 4%
(7201) 15/ 3 期 113, 752 8. 5% 5, 896 18. 3% 5. 2% 4, 576 5, 318 2. 5% 4, 631 - 13. 6%
16/ 3 期予 121, 000 6. 4% 6, 750 14. 5% 5. 6% 4, 850 5, 550 4. 4% 5, 500 18. 8%
スズキ 14/ 3 期 29, 383 14. 0% 1, 877 29. 8% 6. 4% 1, 075 2, 709 1. 8% 2, 136 26. 2%
(7269) 15/ 3 期 30, 155 2. 6% 1, 794 - 4. 4% 5. 9% 969 2, 867 5. 8% 1, 945 - 8. 9%
16/ 3 期予 31, 000 2. 8% 1, 900 5. 9% 6. 1% 1, 100 2, 979 3. 9% 1, 800 - 7. 5%
マツダ 14/ 3 期 26, 922 22. 1% 1, 821 237. 8% 6. 8% 1, 357 1, 331 7. 8% 1, 332 72. 5%
(7261) 15/ 3 期 30, 339 12. 7% 2, 029 11. 4% 6. 7% 1, 588 1, 397 5. 0% 1, 310 - 1. 7%
16/ 3 期予 32, 500 7. 1% 2, 100 3. 5% 6. 5% 1, 400 1, 490 6. 7% 1, 050 - 19. 8%
三菱自動車 14/ 3 期 20, 934 15. 3% 1, 234 83. 1% 5. 9% 1, 047 1, 258 12. 3% 722 40. 5%
(7211) 15/ 3 期 21, 807 4. 2% 1, 359 10. 1% 6. 2% 1, 182 1, 296 3. 0% 680 - 5. 8%
16/ 3 期予 22, 800 4. 6% 1, 250 - 8. 0% 5. 5% 1, 000 1, 300 0. 3% 1, 050 54. 4%
富士重工業 14/ 3 期 24, 081 25. 9% 3, 264 171. 1% 13. 6% 2, 066 825 14. 0% 685 - 2. 4%
(7270) 15/ 3 期 28, 779 19. 5% 4, 230 29. 6% 14. 7% 2, 619 911 10. 4% 1, 107 61. 6%
16/ 3 期予 30, 300 5. 3% 5, 030 18. 9% 16. 6% 3, 370 928 1. 9% 1, 300 17. 4%
いすゞ自動車 14/ 3 期 17, 609 6. 4% 1, 742 33. 2% 9. 9% 1, 193 495 - 7. 3% 819 42. 4%
(7202) 15/ 3 期 18, 794 6. 7% 1, 711 - 1. 8% 9. 1% 1, 171 511 3. 2% 780 - 4. 8%
16/ 3 期予 19, 500 3. 8% 1, 750 2. 3% 9. 0% 1, 100 520 1. 8% 1, 200 53. 8%
ダイハツ工業 14/ 3 期 19, 132 8. 4% 1, 467 10. 3% 7. 7% 836 1, 109 6. 4% 973 33. 1%
(7262) 15/ 3 期 18, 171 - 5. 0% 1, 106 - 24. 6% 6. 1% 681 1, 085 - 2. 2% 1, 290 32. 6%
16/ 3 期予 17, 700 - 2. 6% 1, 000 - 9. 6% 5. 6% 600 1, 065 - 1. 8% 1, 000 - 22. 5%
日野自動車 14/ 3 期 16, 996 10. 3% 1, 122 72. 4% 6. 6% 891 166 7. 4% 662 32. 7%
(7205) 15/ 3 期 16, 853 - 0. 8% 1, 055 - 6. 0% 6. 3% 745 169 1. 6% 693 4. 7%
16/ 3 期予 17, 400 3. 2% 1, 100 4. 3% 6. 3% 740 178 5. 7% 890 28. 4%
8社合計
14/ 3 期 599, 097 17. 8% 45, 345 60. 7% 7. 6% 34, 600 25, 245 4. 9% 28, 325 21. 0%
15/ 3 期 642, 438 7. 2% 51, 040 12. 6% 7. 9% 39, 065 25, 636 1. 5% 28, 806 1. 7%
16/ 3 期予 677, 100 5. 4% 53, 630 5. 1% 7. 9% 40, 570 26, 382 2. 9% 30, 600 6. 2% (出所:各社決算資料より J C R 作成)
※ 8 社合計は上場 10 社のうち、トヨタ自動車の連結対象であるダイハツ工業と日野自動車を除く。 ホンダの 16/ 3 期見通しは IF RS ベース。
【参考】
発行体:日産自動車株式会社
長期発行体格付:A + 見通し:ポジティブ
発行体:いすゞ自動車株式会社
長期発行体格付:A 見通し:安定的
発行体:トヨタ自動車株式会社
国内 C P 格付 :J - 1+
発行体:マツダ株式会社
長期発行体格付:A - 見通し:安定的
■留意事項
本文書に記載された情報は、J C Rが、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また
はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、J C Rは、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、
的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、J C Rは、当該情報の誤り、遺漏、また
は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。J C R は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、
金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因
のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、J C Rの格付は意見の表明であ
って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも
のでもありません。J C Rの格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として
発行体より手数料をいただいて行っております。J C Rの格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、J C Rが保有しています。J C Rの格付データ
を含め、本文書の一部または全部を問わず、J C R に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■NR S R O 登録状況
J C R は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating O rganization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ
スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。
■本件に関するお問い合わせ先